ボルト・アンカー引抜強度計算(接着系・金属拡張式)
あと施工アンカーの許容引張耐力を鋼材破壊・コーン状破壊・付着破壊の3モードから並列評価し、最小値で決定。設備機器耐震計算・看板取付の設計根拠に。M8〜M22 / Fc 18〜36 プリセット対応。
次はこんな計算どうですか?
この計算と合わせて使われることが多いツールです
梁のたわみ・応力計算(単純梁・片持ち梁・両端固定梁)
スパン・荷重・断面性能から最大たわみ・曲げモーメント・せん断力・曲げ応力を一括算出。建築基準法 L/250 を自動判定し、H形鋼・I形鋼・溝形鋼・軽溝形鋼・等辺山形鋼・角形鋼管・鋼管の JIS 規格プリセットに対応。
隅肉溶接のど厚・強度計算
溶接サイズ(脚長)・溶接長・鋼種から隅肉溶接の有効のど断面積と許容せん断耐力を算出。作用せん断力との比較で適合判定。SS400/SM490等の鋼種プリセット対応、鋼構造設計規準準拠の簡易版。
鋼材重量計算
H形鋼、アングル、パイプ等の鋼材を選んで総重量を計算。JIS規格の断面性能(断面二次モーメント等)も検索可能。
解説
ボルト・アンカー引抜強度計算は、 コンクリート躯体に固定したアンカーボルトが、引張力(地震時の引抜・装置反力)に対して安全に耐えられるかを確認する計算です。 あと施工アンカーは、ボルト鋼材の降伏・コンクリートのコーン状破壊・接着剤の付着破壊という3つの破壊モードのうち 最小値が許容耐力を支配するため、3モードの並列評価が必須です。 取付架台や鋼材のサイズ確認には 鋼材重量計算 を、母材側の梁検討には別途構造計算が必要です。
3破壊モードの計算式と記号
国土交通省「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」(平成18年) および日本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説 2010改定」に基づく標準式は次のとおりです。 単位は SI 系で揃え、最終結果は kN に換算します。
Ta2 = 0.23 × √Fc × π × le2 (コーン状破壊)
Ta3 = τa × π × da × le (付着破壊・接着系のみ)
Ta = min(Ta1, Ta2, Ta3) / 安全率
| 記号 | 説明 |
|---|---|
| As (mm²) | ボルトの軸断面積(有効断面積、JIS B 1082) |
| σy (N/mm²) | ボルトの降伏点(材質・強度区分により決まる) |
| Fc (N/mm²) | コンクリート設計基準強度 |
| le (mm) | アンカーの有効埋込深さ |
| da (mm) | ねじ呼び径(M12 なら 12 mm) |
| τa (N/mm²) | 付着強度(接着系の樹脂と鋼材/コンクリート界面の値) |
| Ta (kN) | 許容引張耐力(最小値を安全率で除した設計値) |
コーン状破壊面積の取り扱い
厳密には Ac = π × le × (le + da) とする流派もありますが、 本ツールでは指針に従い Ac = π × le² を採用しています。 本ツールは、群効果(複数アンカー干渉)と縁あき不足による低減を反映するため、 コーン破壊耐力に低減係数 αn・αc を乗じます。
群効果と縁あきの低減
αc = min(1.0, c / (1.5·le)) (縁あき係数)
Ta2_補正後 = Ta2 × αn × αc
s はアンカー間の最小芯々距離、c はアンカー芯〜母材端の最小距離です。 指針上、s ≧ 3·le でコーン破壊面が干渉しないため α=1、c ≧ 1.5·le で縁部の影響なしと評価されます。 本ツールは設計上の目安として線形補間で低減しており、厳密な指針式(重複面積計算)が必要な場合は専門ソフト・指針本文を参照してください。
1本あたりの設計引張力と判定
Ta_allow = min(Ta1, Ta2_補正後, Ta3) / 安全率
判定: Na ≦ Ta_allow なら適合
N はアンカー群全体に作用する引張力、n はアンカー本数です。 引張側のみのアンカー本数を入力するのが基本(転倒モーメントによる引抜の場合は引張側だけを n とする)。 本ツールは Na と Ta_allow の比較で OK / NG を即時判定し、余裕率(または不足率)も表示します。
ボルト規格値とコンクリート強度
計算で使うボルトの軸断面積 As は JIS B 1082、降伏点 σy は JIS B 1051(強度区分)または材質規格で決まります。 本ツールは以下の代表値を内蔵しており、サイズ・材質を選ぶだけで自動入力されます。
JIS B 1082 軸断面積 As
| サイズ | da (mm) | As (mm²) | 推奨 le (mm) |
|---|---|---|---|
| M8 | 8 | 36.6 | 80 |
| M10 | 10 | 58.0 | 90 |
| M12 | 12 | 84.3 | 110 |
| M16 | 16 | 157 | 125 |
| M20 | 20 | 245 | 170 |
| M22 | 22 | 303 | 210 |
材質別 降伏点 σy
| 材質・強度区分 | σy (N/mm²) |
|---|---|
| SS400 / SNB7(一般構造用) | 235 |
| 強度区分 4.6(一般ボルト) | 240 |
| 強度区分 8.8(高力ボルト) | 640 |
| SUS304(ステンレス) | 205 |
コンクリート強度 Fc と √Fc 早見
| Fc (N/mm²) | √Fc | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| 18 | 4.24 | 小規模建物・基礎 |
| 21 | 4.58 | 一般的なマンション・ビル |
| 24 | 4.90 | 中高層ビル躯体 |
| 27 | 5.20 | 高層・耐震要求高め |
| 30 | 5.48 | 高強度コンクリート |
| 36 | 6.00 | 超高層・特殊構造 |
安全率と荷重種別
建築設備の耐震計算では、地震時に作用する短期的な引抜力と、機器自重などの長期的な引抜力を区別して評価します。 日本建築センター「建築設備耐震設計・施工指針 2005年版」では、 短期=地震時は計算用引張耐力をそのまま、長期=常時荷重には安全率 3.0 を見込むのが標準的です。 看板・外装パネルなど風圧力が支配的な部位では、別途 風圧荷重計算 で外力を求め、本ツールに当てはめてください。
- 短期(地震時 等): 安全率 1.0 — 設計用引張耐力 = 最小値そのまま
- 長期(常時荷重): 安全率 3.0 — 設計指針の基本値
- 用途・規定によっては係数 4/3 などの低減を別途乗じる場合があります
注意事項
- 群効果・縁あきの簡易低減: αn = min(1, s/(3·le))、αc = min(1, c/(1.5·le)) の線形補間で簡易評価しています。指針本文の重複投影面積計算とは結果が一致しない場合があるため、厳密設計には専門ソフト併用を推奨します。
- 配置パターンの非考慮: s は最小芯々距離のみを評価しており、直線・L字・格子など配置形状の差異は考慮していません。最も近接する2本間の距離を s として入力してください。
- メーカー試験値の確認: メカニカルアンカーの引張耐力はメーカー認定試験値(製品カタログ・JCAA 認証値)の確認が必須です。本ツールはあくまで指針式による参考値を示します。
- 施工品質依存: 穿孔径・清掃・接着剤の硬化条件で実耐力が大きく変わります。施工管理(ねじ込みトルク管理・引張試験)を必ず実施してください。
- 取付部材側の検討: アンカー単体だけでなく、取付架台・梁の曲げ・せん断検討も必要です。梁設計は 梁のたわみ・応力計算 を併用してください。