避雷針 保護角計算(JIS Z 9290-3 / 旧JIS A 4201)
LPSクラスⅠ〜Ⅳと受雷部高さから保護角・保護半径・保護面積を算出。新JIS(Z 9290-3:2019 / A 4201:2003)と旧JIS(A 4201:1992)の3規格に対応。
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解説
避雷針 保護角計算は、雷保護システム(LPS)の受雷部が 建築物・構造物・受電点をどの範囲まで保護できるかを、保護角法(protection angle method)で評価するための計算です。受雷部先端から鉛直線に対して保護角 α を見込んだ 円錐内が保護範囲となり、地表面では半径 r = h·tan α の円が保護領域になります。
本ツールでできること
- 3規格に対応 — 現行 JIS Z 9290-3:2019、中継規格 JIS A 4201:2003、旧規格 JIS A 4201:1992
- クラス×受雷部高さで保護角を自動算出 — LPSクラスⅠ〜Ⅳの曲線・離散表から即時取得
- 適用判定 — 高さがクラス上限を超える場合は保護角法 適用外を表示
- 参考諸元 — 同クラスの回転球体半径・メッシュ寸法を併記
- PDF帳票出力 — 準拠基準を明記した設計添付資料として保存
保護角法の計算式
保護角法では、受雷部先端から鉛直線に対して保護角 α を見込んだ円錐の内側が 保護範囲になります。地表面(被保護表面)での保護半径 r および保護面積 A は次式で求まります。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| h | 被保護表面より上の受雷部の高さ(受電点高さ) | m |
| α | 保護角(鉛直線に対する角度)。LPSクラスと h で決まる | ° |
| r | 被保護表面(地表面)での保護半径 | m |
| A | 円錐底面(地表面)での保護面積 | m² |
※ h はあくまで「被保護表面より上の受雷部高さ」であり、地盤からの全高ではありません。 屋上から受雷部を建てる場合は屋上面〜受雷部先端の値を使います。
新旧JIS規格の違いと使い分け
日本の建築物等の雷保護規格は、JIS A 4201:1992(旧規格)→ JIS A 4201:2003→ JIS Z 9290-3:2019(現行・IEC 62305-3 整合)の順で改定されてきました。新築設計では JIS Z 9290-3:2019 を引用するのが現在の標準ですが、 既存建物の改修・点検図面では旧規格の表記が残っており、対応関係を理解しておく必要があります。
| 規格 | 保護角の決め方 | 位置づけ |
|---|---|---|
| A 4201:1992 | 一般建築物 60° / 危険物施設 45° の固定値 | 旧規格。既存建物の図面読み取り用 |
| A 4201:2003 | 4クラス×高さ階級(20/30/45/60m)の離散表 | IEC 整合への移行版 |
| Z 9290-3:2019 | 4クラス×高さ連続曲線(h ごとに細かく変化) | 現行。新規設計の標準 |
既存建物を再評価するときの手順
LPSクラス(保護レベル)の選定基準
LPSクラスは「その建物が落雷でどれだけの被害を受けるか」というリスク評価から決めます。 正式には JIS Z 9290-2(雷保護 リスクマネジメント)のリスク計算で、 建物用途・人命/設備損害の重み・地域の年雷撃頻度・雷防護効率を勘案して選定しますが、 実務では用途別に下表の目安を起点として、リスク計算で詳細確認するのが一般的です。
| クラス | 雷防護効率 E | 代表的な対象建物・施設 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 0.98 | 危険物製造所・貯蔵所(消防法)、火薬庫、原子力施設、爆発物取扱施設、軍事施設、重要通信施設 |
| Ⅱ | 0.95 | データセンター、病院、変電所、ガソリンスタンド、不特定多数が利用する大規模商業施設、文化財建造物 |
| Ⅲ | 0.90 | 一般オフィスビル、学校、住宅、共同住宅、工場、小〜中規模の商業ビル |
| Ⅳ | 0.80 | 倉庫、農業用施設、無人施設など、被害が物的・経済的損失に限定される建物 |
実務上の選定フロー
- ① 法令でクラスが固定されるケースを先に確認 — 消防法の危険物施設はクラスⅠ固定。 建築基準法第33条の高さ20m超建築物には避雷設備設置義務があるが、クラス自体は法令で直接指定されず、 JIS によるリスク評価に委ねられる。
- ② 用途で目安クラスを決める — 上表で対象建物に最も近い用途のクラスを起点とする。 判断に迷う中規模オフィス・共同住宅は通常クラスⅢ。
- ③ JIS Z 9290-2 のリスク計算で確認 — 年雷撃頻度(地域マップ)・建物面積・人命損害/公共サービス損失/文化遺産損失/経済損失の各リスクが 許容値以下になっているかを確認し、足りなければクラスを1段階上げる。
- ④ 旧規格図面の読み替え — 旧 JIS A 4201:1992 の「一般 60°」表記の建物はおおむねクラスⅢ〜Ⅳ、 「危険物 45°」はそのままクラスⅠとして再評価する。
※ 雷防護効率 E は「LPS によって減らせる落雷被害の割合」で、クラスが高い(数字が小さい)ほど厳しい設計値になります。 本ツールは保護角の幾何計算に特化しているため、リスク評価による最終的なクラス選定は別途 JIS Z 9290-2 の手順で行ってください。
クラス別 保護角・回転球体半径・メッシュ寸法
現行 JIS Z 9290-3:2019 では、保護レベル(LPL)に応じて雷保護システムを4クラスに分類します。 クラスⅠが最も厳しく(重要施設・危険物)、クラスⅣが最も緩い(住宅等)。 クラスごとに保護角・回転球体半径・メッシュ寸法が同時に規定されています。
| クラス | 回転球体半径 | メッシュ寸法 | 保護角法 上限高さ | h=10m での α 目安 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | 20 m | 5×5 m | 20 m | 45° |
| Ⅱ | 30 m | 10×10 m | 30 m | 53° |
| Ⅲ | 45 m | 15×15 m | 45 m | 60° |
| Ⅳ | 60 m | 20×20 m | 60 m | 65° |
※ 各クラスの保護角は h(受雷部高さ)が上限値に達するときに 25° へ収束する曲線で規定されます。 h が小さいほど α は大きく(クラスⅣで h=2m なら約 79°)、h が上限近くで α は最も小さくなります。
適用建築物と法的位置づけ
雷保護システムの設置は、用途・規模に応じて法令で義務化されます。 日本では主に建築基準法と消防法の2系統で規定があります。
- 建築基準法 第33条 — 高さ 20m を超える建築物には避雷設備の設置が義務。技術基準として JIS A 4201(現行は Z 9290-3:2019)が引用される。
- 消防法 — 指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う製造所等には避雷設備が必要(クラスⅠ相当)。
- JIS Z 9290-1(リスクマネジメント) によるリスクアセスメントで、 建物用途・地域雷害頻度・人命/設備損害の重み付けからクラスⅠ〜Ⅳを選定する。
- 高さ 60m を超える建築物では、上部 20% の側壁 への受雷部設置が JIS Z 9290-3:2019 で求められる(側壁雷撃対策)。
計算上の注意事項
- 単一受雷部の理想モデル: 本ツールは1本の受雷部による円錐保護領域を計算します。複数受雷部を組み合わせる場合は、 各受雷部の保護領域の重ね合わせ(または2点間を結ぶ線上の保護曲面)を別途検討します。
- 保護角法の限界: 高さがクラス上限を超える場合、保護角法は適用できず、回転球体法またはメッシュ法を採用する必要があります。 JIS Z 9290-3:2019 では3手法の組合せが標準。
- 受雷部高さ h の取り方: h は被保護表面(屋上面・地盤面など)からの相対高さです。 屋上に支柱を立てる場合は屋上面〜支柱先端、独立避雷針の場合は地盤面〜先端を h とします。
- 引下げ導体・接地極の検討: 受雷部の保護角だけでは雷保護は完成しません。引下げ導体(クラスⅠ:10m間隔/Ⅳ:20m間隔)、 等電位ボンディング、接地抵抗(10Ω以下が望ましい)の併設が必須です。
- SPD(サージ保護装置)との組合せ: 外部雷保護システム(受雷部・引下げ導体・接地系)と内部雷保護システム(SPD・等電位ボンディング)は セットで設計する必要があります。