N値計算(柱頭・柱脚の接合金物選定)
木造の柱頭・柱脚に生じる引抜力を告示1460号のN値計算法で算定し、必要な接合金物(かど金物・羽子板ボルト・ホールダウン)を記号(い)〜(ぬ)から自動選定。壁倍率・出隅/一般・上下階から即判定します。
次はこんな計算どうですか?
この計算と合わせて使われることが多いツールです
解説
N値計算は、木造軸組構法の柱頭・柱脚に地震や風で生じる引張力(引抜力)を耐力壁の壁倍率から簡易に求め、それに耐える接合金物を選ぶ検討です。平成12年建設省告示第1460号 第二号に定められた方法で、同じ告示の表三(仕様表)から軸組の種類と配置で選ぶ方法と並んで用いられます。仕様表より合理的(=過大にならない)な金物選定ができるため、実務では N値計算が広く使われています。
引抜力の直接の原因は、耐力壁が地震力・風圧力を負担して生じる転倒モーメントです。建物に必要な耐力壁の量そのものは 壁量計算で確かめ、そこで決めた壁倍率を本ツールに入力する、という順序で使います。2025年(令和7年)4月施行の改正で木造2階建てが新2号建築物となり構造審査の省略対象から外れたため、N値計算書を提出する場面が増えています。
計算式と係数
検討する柱が最上階(平屋を含む)にあるか、その下の階(2階建ての1階)にあるかで式が変わります。下階の柱には、その柱と直上の柱の両方の引抜力が累積します。
平屋・最上階の柱: N = A1 × B1 − L
2階建ての1階柱: N = A1 × B1 + A2 × B2 − L
| 記号 | 意味・値 |
|---|---|
| A1 | 当該階における柱の両側の壁倍率の差(筋かいがあれば補正値を加算) |
| A2 | 直上階における柱の両側の壁倍率の差(2階建ての1階柱のみ) |
| B1・B2 | 周辺部材による押さえ効果係数。出隅の柱 0.8 / その他の柱 0.5 |
| L | 鉛直荷重による押さえ効果係数。最上階・平屋=出隅 0.4/その他 0.6、2階建て1階=出隅 1.0/その他 1.6 |
A は「両側の壁倍率の差」です。片側にしか壁が無い出隅の柱では、もう一方を 0 とするので A はその壁の壁倍率そのものになります。B は隅か中間かで柱を押さえる床・梁の効き方の違いを、L は柱に載る鉛直荷重が引抜きに抵抗する効果を表します。求めた N が 0 以下なら接合金物は不要(短ほぞ差し・かすがい)です。
筋かいの補正:片筋かいは柱を引き抜く向き・押さえる向きのどちらにも働くため、筋かいの種類と取り付く位置に応じた補正値を A に加減します。本ツールでは補正値を任意入力できます。たすき掛け(両筋かい)は水平力が相殺されるため原則補正は不要です。
N値と接合金物の対応(告示1460号 表三)
求めた N値に対し、必要とされる引張耐力(目安として 約 5.3 × N kN)以上の耐力をもつ接合方法を、記号(い)〜(ぬ)から選びます。N値が大きいほど、かど金物・羽子板ボルトからホールダウン金物へと段階的に強い接合が求められます。
| 記号 | N上限 | 必要耐力 | 接合方法(例) |
|---|---|---|---|
| い | 0.0 | 0.0 kN | 短ほぞ差し・かすがい打ち |
| ろ | ≦0.65 | 3.4 kN | 長ほぞ差し込み栓/かど金物 CP・L |
| は | ≦1.00 | 5.1 kN | かど金物 CP・T/山形プレート VP |
| に | ≦1.40 | 7.5 kN | 羽子板ボルト/短冊金物 |
| ほ | ≦1.60 | 8.5 kN | 羽子板ボルト/短冊金物(スクリューくぎ併用) |
| へ | ≦1.80 | 10.0 kN | ホールダウン金物 HD-B10(10kN 用) |
| と | ≦2.80 | 15.0 kN | ホールダウン金物 HD-B15(15kN 用) |
| ち | ≦3.70 | 20.0 kN | ホールダウン金物 HD-B20(20kN 用) |
| り | ≦4.70 | 25.0 kN | ホールダウン金物 HD-B25(25kN 用) |
| ぬ | ≦5.60 | 30.0 kN | ホールダウン金物 HD-B15 × 2 |
※ 品番は代表例です。告示が定めるのは接合方法と必要耐力で、同等以上の耐力をもつ金物であれば構いません。N > 5.6 は表の範囲外で、個別の構造計算が必要です。
ホールダウン金物が引き抜きに抵抗する仕組みは、あと施工アンカーが躯体から引き抜かれまいとする挙動と共通します。設備架台や外装材の取り付けで必要となる引張耐力は アンカー引抜強度計算で確認できます。
適用範囲と注意事項
本ツールは横架材上端間距離(階高)が 3.2m 以下の標準的な軸組を対象としています。一部の解説では式に階高補正 ×H/2.7 が示されますが、3.2m 以下では H を 2.7 とする扱いで補正係数が 1.0 となり、標準式と一致します。階高が 3.2m を超える場合は告示1460号の仕様表・N値計算法の適用条件そのものが変わるため、本ツールの対象外です。
壁倍率の合計上限は令和7年改正で 5 倍から 7 倍に拡大されました。実態の壁倍率が 7 倍を超えるような特殊な軸組では N値計算の前提が異なります。地震力・風圧力に対する耐力壁の必要量は 風圧荷重計算や壁量計算で別途確かめてください。
※ N値計算は仕様規定(ルート1)の一部です。柱頭柱脚の接合のほか、壁量計算・壁配置のバランス(四分割法)・柱の小径の確認がそれぞれ必要です。本ツールは大臣認定プログラムではなく、確定は最新の告示・技術的助言・構造設計者の判断によってください。