EL-07電気設備

ヒューズ選定ツール

次はこんな計算どうですか?

この計算と合わせて使われることが多いツールです

解説

ヒューズ選定は、定格電流だけでなく、 周囲温度によるディレーティング(軽減)、突入電流(インラッシュカレント)への耐性、 定格電圧、遮断容量、I²t(溶断エネルギー)など複数の要素を総合的に判断する必要があります。 過電流保護機器の選定ではブレーカー選定許容電流の確認とあわせて検討してください。

ヒューズ容量の計算手順

本ツールは以下の手順で推奨ヒューズ容量を算出します。 定常電流に対する最小定格と、突入電流に対する最小定格の両方を計算し、 どちらも満たす値を推奨値として提示します。

① 定常電流ベースの最小定格

Imin(steady) = I負荷 ÷ (安全率 × 温度ディレーティング係数)

② 突入電流ベースの最小定格

Imin(inrush) = I負荷 × 突入電流係数

③ 推奨定格(①と②の大きい方)

I推奨 = max(Imin(steady), Imin(inrush))

規格による安全率(Safety Factor)

ヒューズは定格電流ぎりぎりで連続使用すると劣化が進みます。 各規格は連続使用時の上限を定めており、これを安全率として計算に組み込みます。

規格安全率説明
UL/CSA(北米)0.75定格電流の75%以下で使用を推奨(NEC連続負荷は0.8)
JIS/IEC(欧州・日本)約 0.9定格100%近くまで使用可能だが、90%程度以下が推奨

例:10A の連続負荷に対し、UL ヒューズなら 10 ÷ 0.75 = 13.3A 以上、 IEC ヒューズなら 10 ÷ 0.9 = 11.1A 以上の定格が必要です。

温度ディレーティング(Temperature Derating)

ヒューズは熱によって溶断するため、周囲温度が高い場合は許容電流が下がります。 一般的には 25℃ を基準(100%)として、 温度が上がると約 0.3%/℃ のペースで定格を低減させる必要があります。 制御盤内部や夏場の屋外設置では温度が 50℃ 以上になることもあるため注意が必要です。

周囲温度ディレーティング係数使用環境の目安
−10℃1.07寒冷地・冷凍倉庫
25℃1.00標準環境(基準)
40℃0.96屋内一般・空調設備有り
55℃0.91制御盤内・夏期屋外
70℃0.87高温環境・モーター近傍

突入電流(Inrush Current)への対応

電源投入時に流れる一時的な大電流でヒューズが劣化・誤溶断しないよう、 負荷の特性に応じて適切なタイプ(速断型/タイムラグ型)を選びます。 誘導性負荷では定常電流の 5〜10 倍、コンデンサ入力型電源では 10〜30 倍の突入電流が流れる場合があります。

負荷の種類突入係数(目安)推奨タイプ
抵抗負荷(ヒーター・白熱灯)1.0速断型(F)でも可
コンデンサ入力型電源(SMPS)1.5タイムラグ型(T)推奨
モーター・トランス2.0タイムラグ型(T/TT)推奨
半導体保護(SCR/IGBT)1.0超速断型(FF / aR)専用品

標準アンペア定格(IEC 60127 / UL 248)

ヒューズの定格電流は規格で標準値が定められています。計算で求めた最小定格より「直近上位」の標準値を選定します。 中間値(例:4.5A)は存在しないため、5A を選ぶことになります。

レンジ標準アンペア値(A)
小電流(〜1A)0.05 / 0.063 / 0.08 / 0.1 / 0.125 / 0.16 / 0.2 / 0.25 / 0.315 / 0.4 / 0.5 / 0.63 / 0.8 / 1.0
中電流(1〜10A)1.25 / 1.6 / 2.0 / 2.5 / 3.15 / 4.0 / 5.0 / 6.3 / 8.0 / 10
大電流(10A〜)12 / 15 / 16 / 20 / 25 / 30 / 32 / 40 / 50 / 63 / 80 / 100 / 125 / 160 / 200

ヒューズ種別記号(IEC 60127)

ヒューズ本体に印字される記号で動作特性が分かります。設計時はこの記号を仕様書に明記してください。

記号名称動作特性
FF超速断型半導体保護用、最速で溶断
F速断型標準的な速断、突入耐性なし
M中速型F と T の中間特性
Tタイムラグ型突入電流に対し溶断遅延あり
TT超タイムラグ型大きな突入電流向け、最大の遅延

I²t(溶断エネルギー)の概念

I²t はヒューズの溶断に必要なエネルギー量で、電流の二乗と通電時間の積(A²·s)で表されます。 短時間の大電流(突入電流)に対するヒューズの応答を評価する指標です。

I²t = ∫ i² dt   [A²·s]

メーカーカタログには「溶融 I²t(Melting)」と 「遮断 I²t(Clearing)」が記載されており、 負荷側の突入 I²t がヒューズの溶融 I²t を超えないよう選定します。 半導体保護では特に重要な指標です。

定格電圧と遮断容量

ヒューズには定格電流以外に、回路電圧と短絡電流に応じた選定要素があります。 この2項目を見落とすと、短絡時にヒューズが遮断できず大事故につながります。

定格電圧(Rated Voltage)

使用回路の最大電圧以上を選定します。AC専用品をDC回路に流用すると、 DC は電流ゼロクロスがないためアーク消弧できず遮断不能となります。 標準的な定格電圧は 32V / 125V / 250V / 500V(AC)、24V / 48V / 125V / 250V(DC)。

遮断容量(Breaking Capacity)

想定される短絡電流を安全に遮断できる能力。ガラス管ヒューズは 35〜100A 程度、 セラミック管(充填型)は 1500A〜200kA まで対応します。 産業用主回路では必ずセラミック管 cartridge fuse を使用してください。

注意事項

本ツールの結果は選定の目安です。最終的には使用するヒューズメーカーのカタログデータ (I-t特性曲線、I²t特性、ディレーティング曲線)を確認し、実機でのテストを行ってください。

関連ツール:回路保護全体の設計にはブレーカー選定、 電線サイズの決定には許容電流、 電圧降下の確認には電圧降下計算もあわせてご利用ください。

よくある質問