雨水流出量計算(合理式)
合理式 Q=(1/360)×C×I×A で流域の計画雨水流量を即時算出。工種別流出係数の加重平均と、タルボット・シャーマン・久野石黒の3式型の降雨強度式に対応した下水道設計指針準拠の簡易版。
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解説
合理式は、雨水管・側溝・調整池等の容量設計で、 流域面積・流出係数・降雨強度から計画雨水流出ピーク量を算出する代表的な手法です。 日本では下水道施設計画・設計指針において、概ね 200 ha 以下の都市流域に対する 標準的な雨水流量算定式として位置付けられており、本ツールは現場で必要となる工種別流出係数の加重平均と、 タルボット・シャーマン・久野石黒の3式に対応した降雨強度の自動計算を組み合わせて、 計画雨水流量 Q を即時に求めます。算出した雨水流量から必要管径を選定するには 排水管径計算(マニング式) に流量を持ち込んで管径を確定する流れが標準です。
合理式と記号定義
合理式は流域内の降雨が時間当たり一定の割合で流出するという単純化のもとに導かれた経験式で、 ピーク流量 Q は流域面積 A、流出係数 C、降雨強度 I の積で表されます。
| 記号 | 説明 |
|---|---|
| Q (m³/s) | 計画雨水流量(ピーク流量) |
| C | 流出係数(無次元、土地利用に依存) |
| I (mm/h) | 流達時間に対応する降雨強度 |
| A (ha) | 流域面積(1 ha = 10,000 m²) |
| t (分) | 流達時間 = 流入時間 t1 + 流下時間 t2 |
| 1/360 | 単位換算係数(mm/h × ha → m³/s) |
係数 1/360 は降雨強度の mm/h と流域面積の ha を流量 m³/s に揃えるための単位換算係数で、 1 mm/h × 1 ha = 10 m³/h = 1/360 m³/s から導かれます。流域面積を km² で表す場合は係数が 1/3.6 に変わります。
流出係数 C の標準値
流出係数は土地利用ごとに大きく異なるため、対象流域の組成に応じて適切な値を選ぶ必要があります。 日本下水道協会の標準値では、屋根や舗装面の不浸透域は 0.80〜0.95、芝生や畑などの浸透域は 0.05〜0.30 と示されています。
工種別基礎流出係数
| 工種 | 標準値 | 範囲 |
|---|---|---|
| 屋根 | 0.90 | 0.85〜0.95 |
| 道路(アスファルト舗装) | 0.85 | 0.80〜0.90 |
| その他不浸透面 | 0.80 | 0.75〜0.85 |
| 水面 | 1.00 | 1.00 |
| 庭・芝生 | 0.15 | 0.05〜0.25 |
| 公園・緑地 | 0.20 | 0.10〜0.30 |
| 田 | 0.75 | 0.70〜0.80 |
| 畑 | 0.20 | 0.10〜0.30 |
| 山地 | 0.30 | 0.20〜0.40 |
用途地域別 総合流出係数
概略検討では用途地域別の総合流出係数を直接入力するのが手早く、本ツールの「直接入力」モードに対応します。
| 用途地域 | C |
|---|---|
| 商業地区・密集市街地 | 0.80 |
| 集合住宅地区 | 0.65 |
| 一般住宅地区 | 0.50 |
| 田畑混在地区 | 0.45 |
| 山地・公園・農地主体 | 0.30 |
都市河川の合流地点や開発計画では、流域内の屋根・道路・芝生などを面積で按分して 加重平均を取る「工種別加重平均モード」が標準です。本ツールは行を追加するごとに自動で C̄ = Σ(C·A)/ΣA を再計算します。
降雨強度式と流達時間
降雨強度 I は流達時間 t(流入時間 + 流下時間)に対応する平均降雨強度として求めます。 確率年と地域に応じた係数 a, b, n が自治体の雨水管理指針で公表されており、本ツールは代表的な3式型に対応しています。
シャーマン型: I = a / tn
久野・石黒型: I = a / (√t + b)
| 式型 | 特性 |
|---|---|
| タルボット型 | 5〜120分の継続時間で安全側。日本の都市排水で最も多用 |
| シャーマン型 | 長時間継続降雨に強い。山地流域・大規模流域で採用 |
| 久野・石黒型 | タルボットとシャーマンの中間特性。古い設計指針に多い |
- 流入時間 t1: 流域最遠点から最初の管渠に達するまでの時間。市街地で 5〜10 分、団地内で 5 分、農地で 30 分前後が目安
- 流下時間 t2: 管渠内での流下時間。L/V(管路長/平均流速)で算出。流速はマニング式で求める
- 最小流達時間: 多くの自治体で 5〜10 分が下限値として規定。これを下回ると降雨強度が過大になり過剰設計を招くため
- 確率年: 排水計画では 5〜10 年確率、雨水調整池では 30〜50 年確率を採用するのが一般的
管渠内の流下時間 t2 を求める際の流速は、 排水管径計算(マニング式) で計画管径と勾配から算出した値を使うと整合的です。 排水勾配の単位換算(%・‰・1:n)が必要な場合は 勾配・レベル計算 と組み合わせてください。
- 合理式の適用範囲: 概ね 200 ha 以下の市街地・小流域での適用を前提としています。それを超える流域では貯留関数法・流出計算モデル(NAM, SWMM など)の検討が必要です。
- 気候変動への対応: 近年の集中豪雨を受けて確率降雨強度を見直す自治体が増えています。設計時は最新の指針値を使用してください。
- 浸透・貯留施設の考慮: 雨水浸透ますや貯留槽を設けると実効的な C を下げられます。雨水流出抑制計画では別途流出抑制量を加味してください。